西アフリカでの植林プロジェクトの実施について


マメ科植林によるサヘル地域緑化と生計向上

特定非営利活動法人 平和環境もやいネット
理事長 古川 久雄

 

本事業の目的は、西アフリカ・セネガル中北部の半乾燥地における砂漠化防止と地域住民の生計向上である。主な活動として、202111月~20221月にかけて、対象地であるセネガル共和国バンベイ県ンデム地区およびンバケ・カジョール地区の計18村において、マメ科木本(ホウオウボク Delonix regia等)1,300本およびその他有用樹種2,600本の苗木を計120世帯に配布して、現地NGOの指導、管理のもとで植林し、乾季の枯死対策、家畜による食害の対策等を実施した。

当初計画では、事業実施者が日本から現地に赴き資材調達や植林イベントを実施・管理する予定であったが、Covid感染拡大に伴う渡航制限により不可能となったため、事業実施者と関係の深い現地日系法人「日本植物燃料(株)」に実質的な業務管理を委託する形で実施した。今回の植林が生育し、植林地から家畜飼料を供給することで牧畜を生業とする地域住民の生計向上と過放牧による砂漠化抑止を目指している。

西アフリカで植林する女性
西アフリカで植林する男性
植えた木々を管理する男性

 

<事業の詳細>

【事業実施地区】

セネガル共和国バンベイ県の以下各村(計18村、植林地面積計25ha

Ndem, Garass, Pothie, Ndiawe, Ngaoul, Mbousso, Mbodien, Thiegne, Makka Serere, Ngaga Wolof, Bakk, Ndiarno, Ndiomb, Darou Dimb, Boungoye Peul, Thiokeme, Darou Dimb, Mbacke Kajoor

SOCOフーズで植林実施した地区の地図

 

【植林樹種、本数】

ホウオウボク(Delonix regia/ Peltophorum pterocarpum1,300本、レモン (Citrus limon) 650本、マンゴー (Mangifera indica) 650本、グァバ (Psidium guajava) 650本、ユーカリ (Eucalyptus globulus Labill) 650

西アフリカに植えた植物の写真西アフリカに植えた植物の写真

 

【植栽方法の特徴】

従来の苗木の植栽では、草生状態での苗木の植え付けを行うが、この場合、①草本との養分・水分の競合、②草本による土壌水の蒸散がおき、十分な水分を供給することが困難、③放牧家畜による食害といった問題点がある。しかし、ブルキナファソに起源を持つ、ザイ(Zai) の技術を援用して苗の植栽を行う。ブルキナファソでは、この技術を作物に援用し、土壌流亡を防止しながら生産性を上げてきた実績がある。本事業でも、苗木の植栽を行う際にこの技術を使用し、表面流去水を貯留し、養分供給を行うことで、より活着率を高めていく。

ザイの苗木の植栽技術の説明図

【事業実施の方法と課題】

・現地渡航ができないため、活動主体である地域住民との関係づくりも含め現地協力者に事業管理を委ねる形で実施し、適宜リモート会議によりモニタリングを行って進捗を管理する体制が構築できた。

・本来は89月の雨季に植林を実施する予定であったが、協力者の時間的制約や事業地が遠隔であることから準備に時間がかかり、乾季に入ってからの実施となったが、潅水等の対策により生存率はほぼ想定通りであった。

・当初計画では初年度事業の成果を核により広範な参加を呼びかけ植林地を拡大してゆく予定であったが、現地の人的リソースに限界があり、事業継続が困難と判断した。

西アフリカの現地協力者達による植林



【関係者の声】

・サヘル地域の緑化は、枯死や放牧による食害といった問題がつきもので、単に植えるだけでは森づくりに至らない。植林後2年程度は乾季の潅水や食害対策などが必須であり、そうした管理活動も事業に組み込んで用具、資材の配布や技術指導を行ったこと、さらに個人の土地を植林地とすることで土地所有者の管理意識を高めたことは、実効性、持続性のある植林プログラムとして評価できる(砂漠化対策の専門家)

 

【参加者の声】

・これまで苗をもらって植えても直後の乾季で枯れたり家畜に食べられてしまうことがほとんどだったが、今回は水やり用のタンクや動物除けの柵も提供され適切な管理の方法も指導してもらったため、きちんと育てられると思う(40代女性村人)

・ぜひ学校のプログラムとして、生徒に木を植えて育てる経験をさせたい(中学校の校長)

植えた苗を動物から守るためのネットを見つめる男性植えた苗を乾季の枯れから守るための水やり用タンク